目次

1-1.はじめに (著:穂積啓一郎)

定量分析では物の量を数値で表しますが,質量や体積のように普遍的な測定器で数値化できるもののほか,起電力や熱伝導度など特殊なセンサーで拾いあげた電気信号を,感度係数を使って物の量に換算する方法があります.得た数値に確信と満足があればよいのですが,もっと正しい値に近づけようとすると測定値に一定のルールで修正を加えることがよく行われます.修正をしたほうが良い程度の軽い要求もありますが,修正をしなければ役に立たないと言う場合もあり,重要度は測定の種類によって異なります.

マニュアル分析の多かった頃は,分析ステップがはかりの計量やビュレットの滴定値でいちいち確かめながら進められたので,これらの量器が精確なものであれば, 間違っても許容誤差の範囲をあまり外れることはありませんでした.センサーを経由して測定値を得るようになって,目的物の量とセンサー出力の比例性,信号対雑音比,増幅器の経時変化など変わりやすい要素が加わって,分析化学者には余分な心配が増えてきました.それにも拘わらずわれわれは信頼の置ける分析値を提供する責務がありますので,得られた測定値に可能な修正を加えて正しい値に導かなくてはなりません.状況はいろいろありますが,気がついた項目について修正のあり方を述べたいと思います.